CulCul 10月号 2013 page 4/16

CulCul 10月号 2013

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概要:
北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

4インパール作戦従軍時の手帳全6冊。上3冊は手製。○火野葦平の芥川賞受賞 火野葦平は、1906(明治39)年、現在の北九州市若松区に生まれます。本名、玉井勝則。父玉井金五郎と母マンは洞海湾で石炭荷役を請け負う「玉井組」を興したばかりでした。 旧制小倉中学校在学のころから文学に親しんだ火野は、家業を継ぐ一方、同人誌で創作活動を続けていました。38(昭和13)年に第6回芥川賞を受賞した『糞尿譚』はそうした中で書いた一編です。ところが、この受賞が決まったとき、火野は前年に勃発した日中戦争に応召し、中国杭こうしゅう州で従軍中でした。 戦線の〈兵隊さん〉が芥川賞を受賞したニュースは、「陣中授与式」という派手なパフォーマンスで喧けんでん伝され、火野の人生を大きく変えることになります。 火野はこの後すぐ報道部へ転属となり、徐じょしゅう州会戦に従軍。従軍記『麦と兵隊』を発表し、戦時下の日本で爆発的な支持を得ていきます。○従軍手帳の執筆と意味 生来のメモ魔である火野は、実に多くの記録を残しています。90冊ほど残る手帳類のうち、およそ20冊がいわゆる「従軍手帳」です。小ぶりな手帳(15×8㎝程度)に、戦地での日録を驚くほど細かな字で、時にイラストを交え克明につづりました。 杭州(37年?)、広東(38年?)、海南島(39年)、汕せんとう頭(同)、比島(42年)、インパール作戦(44年)などの記録が確認できます。たとえば、甚大な犠牲を出しながら大敗北を喫し、「無謀」と評されるインパール作戦については次のようなメモを残し、苦悩をのぞかせています。○ノーミソヲ地ニタタキツケ、スリツケタイヤウナ戦デアッタ、○戦斗ノ実相、未曽有ノ酷烈サ(略)○毎日平均(六月マデ)二千人ノ損耗、(略) これら従軍手帳は、火野文学のルーツであると同時に、日本近現代史にとっても重要な史料です。また今回のようなメディ展示の様子戦地でメモをとる火野葦平火野葦平の従軍手帳文芸hiroba 中西 由紀子北九州市立文学館 学芸員Yukiko Nakanishiようこそ文学館へ〒803-0813 北九州市小倉北区城内4の1093(571)1505【開館時間】(入館は閉館の30分前まで)平日 午前9時30分~午後7時土日祝 午前9時30分~午後6時【休館日】 月曜日(月曜が休日の場合は翌日)【入館料】一般 200円  中高生 100円 小学生 50円〈年間パスポート〉一般 400円  中高生 200円 小学生 100円Informationア論へ切り込む可能性も秘めています。 内容の一部は、研究者によりすでに活字として報告されていますが、全容の解明と詳細な検証がまたれます。 文学館では今年末まで常設展示として火野葦平の従軍手帳を展示します。ぜひ、この機会に歴史の証言に触れてみてください。 去る8月14日(水)、テレビ番組「NHKスペシャル」で北九州市立文学館の寄託資料が取り上げられました。番組は「従軍作家たちの戦争」と題し、火野葦平が戦地で書きつづった手帳をひもときながら、文学者を戦争に動員する軍のメディア戦略と一人の従軍作家の軌跡をたどるドキュメンタリーです。今回は、ここで注目された「従軍手帳」と呼ばれる資料について紹介します。