CulCul 1月号 2014 page 4/16

CulCul 1月号 2014

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概要:
北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

4『骨壺の風景』原稿天神島小学校※卒業時の清張。大正11 年。母校・天神島小学校にピアノを寄贈。昭和36年。生い立ちや、当時の北九州市が偲しのばれ、なかなか味わい深く貴重なテキストです。惜しむらくは、清張にも『東京タワー』のようなユーモアがあったなら、もっと地元の人にも理解されたのでは……と考えるのは余計なお世話でしょうか。清張本人が言っているように、苦労性だった母の血を受け継いでしまった、作家の性分なのでしょう。 『半生の記』から15年後、『骨壺の風景』が『新潮』(昭和55年2月号)に掲載されました。そこに繰り返されるエピソードは、『半生の記』とほとんど同じですが、70歳の清張が実際に小倉の街を訪ね歩き、地名や人名などが全て実名で登場する、エッセイのような小説です。 祖母・カネは〈清さん、ウチが死んでもおまえをま? ? ? ? ぶって(守って)やるけんのう〉というのが口癖でした。〈私は、小さいときから他人のだれからも特別に可愛がられず、応援してくれる人もなかった。冷え冷えとした扱いを受け、見くだす眼の中でこれまで過ごしてきた。その環境は現在でもそれほど変わっていないと思っている。が、とくにひどい落伍もしないで過ごせたのは、祖母がま? ぶ?っ?て?くれているようにときどきは考えたりする。〉と清張は書いています。葬式もろくに出せず、預けたままだった祖母の遺骨は、寺によって合葬されていました。「私」は、位牌だけを持って小倉を去ります。 この『骨壺の風景』には〝特筆すべきこともない半生?という自己評価は、もはやないように思います。あるのはただ、何者でもなかった清張に流れていた無垢な時間であり、すでに亡くなった人たちから注がれていた愛情の記憶ではないでしょうか。 『東京タワー』にも、亡きオカンの位牌を持って小倉に帰郷する場面があります。〈川沿いに面した部屋から、八坂神社へ向かう初詣での人たちが見える。窓辺に位牌とビールを置いて、懐かしい小倉の町並みを眺めた。/この川沿いにある病院でボクは生まれたらしい。今もまだ、その建物はあるのだろうか。/「オカン、帰って来たよ。ずいぶん変わっとるね。玉屋とか井筒屋はあるんやろうか。ルイ・ヴィトンができとったけど、作家と故ふるさと郷 ――清張と『東京タワー』と、北九州市 北九州市は、清張の幼少期から壮年期までを育んだ、紛れもない「故郷」ですが、当時のことを書いた作品は、さほど多くありません。しかも、あまり良い想い出を書いていないせいか「清張は小倉が嫌いだった」という噂がいまだに聞こえてきます。考えてみると「故郷」とは、作家にとって一つのテーマにもなりうる存在です。 リリー・フランキーは『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(以下『東京タワー』)で、昭和40年代前後の北九州を描いています。「ボク」は少年時代を筑豊で過ごしますが、父の住む小倉や、伯母の住む若松などを行き来します。定職に就かず、母に苦労をかける父、一人っ子の主人公は、どことなく松本清張の『半生の記』とも重なります。 『半生の記』は、「回想的自叙伝」というタイトルで『文藝』(昭和38年8月号?40年1月号)に連載された自伝的作品です。単行本の〈あとがき〉で、清張は〈書くのではなかったと後悔した。自分の半生がいかに面白くなかったかが分った。〉と書いています。本人の気持ちはさておき、読者にとっては、作家の文芸北九州市立松本清張記念館北九州市小倉北区城内2の3093(582)2761【観覧料】 ※( )内は団体料金一般   500円( 400円)年長者利用証提示:400円中・高生 300円( 240円)小学生  200円( 160円)【開館時間】(入館は午後5時30分まで)午前9時30分~午後6時【休館日】年末( 12月29日~12月31日)Information※ 天神島小学校は廃校となり、もとの場所は市営駐車場となっている。現在は小倉中央小学校に統合。hiroba 柳 原 暁 子北九州市立松本清張記念館 専門学芸員Akiko Yanagihara清張アラカルト本物なんやろうかね?」〉リリーさん、それは本物です。『東京タワー』の小倉もまた、移りゆく故郷の姿でありましょう。 清張の没後、北九州市は「おかえりなさい」と作家を迎えました。清張文学の原ふるさと点である、ここ北九州市に、記念館はあるのです。 当館では、1月から特別企画展「北九州市と松本清張」を開催します。清張と故ふるさと郷との絆を、あらためて市民の皆さんに知っていただけたら幸いです。催事情報を見る