CulCul 2月号 2014 page 4/16

CulCul 2月号 2014

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北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

4『ガラスの城』講談社文庫『古代探求』ゲラれ、ブラッシュアップして単行本化することがしばしばあります。歴史に関する作品では特に顕著で、たとえば『古代探求』では、通常は2回で校了(修正を終わらせ、決定稿とすること)にするものが、なんと6回も手を入れつづけました。修正を受けるたびに紙面を組み直す出版社側の苦労はいかばかりだったかと思いますが、ゲラ(校正のための仮刷り)に書き込まれた丁寧で繊細な訂正の文字からは、読者に少しでも情報を正確に届けたい、楽しませたいという清張の想いが滲にじみ出ています。 さらに『ガラスの城』の雑誌掲載誌版と単行本とを比較していくうち、全体的にミステリー作品にしては多く手が入っていることが分かってきました。『ガラスの城』の単行本化は連載終了から13年を経た76年で、この間の時代の変化が反映されているのです。いわゆる「高度経済成長期」を挟んだ13年間の社会の変化は大きく、用語や年齢設定なども時代を反映し大幅に変更されています。 たとえば先の一文では〈新幹線〉が採用されているだけですが、修善寺から東京までの所要時間に触れた別の箇所では、到着が約1時間短く修正されていました。これはちょうど新幹線の利用で短縮される時間です。 今回の調査では当時の時刻表が役立ちました。東海道新幹線開業に沸き立つ雰囲気が溢れていたり、現在は廃線の路線が現役だったりと、興味深い日常が封じ込められています。『点と線』の登場人物は時刻表で空想旅行をしますが、過去の時刻表は時間旅行の入口にもなります。 『ガラスの城』ではほかにも、都心の職場(雑誌では「東京駅前の新丸ビル」)までの通勤に、荻窪在住の主人公は、雑誌では〈中央線〉、単行本では〈地下鉄〉を利用します。〈地下鉄〉の採用は、連載掲載後に地下鉄丸ノ内線の新宿・荻窪間が開通し便利になったことを反映しているのです。また、「BGって何?」という筆者のような読者のために「OL」と書き直されていたりと、用語も変更されています。雑誌・単行本それぞれの読者を楽しませたいという清張の心遣いが感じられます。(ちなみに、BGとはbusiness girl の略語で、連載当時一般的に使われていたそうです。)時間旅行の入口清張作品再読『ガラスの城』 今回は『ガラスの城』をご紹介します。1962年から63年にかけて雑誌『若い女性』に連載された現代ミステリーで、何度かテレビドラマ化されたものをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。舞台は都心の高層ビルにオフィスを構える商社で、社員旅行先の修善寺で突然課長が失踪し、社員たちが真相に迫るという物語です。 先日、この作品について問い合わせがありました。「『ガラスの城』を文庫本で読んでいますが、64年開業の新幹線が登場するのは、どうしてでしょうか」とのお尋ねです。なるほど、連載時は新幹線はまだ走っていませんね……たしかに不思議です。 指摘の箇所は「この時間だと、とても課長は新・・・・・・・幹線の終列車に間に合いっこない」という一文です。調査したところ、雑誌連載時の誌面では「この時間だと、とても課長は終・・・汽車に間に合いっこない」となっており、〈新幹線〉は連載後の単行本化に伴い、書き加えられたことがわかりました。 清張は連載時の文章に手を入文芸北九州市立松本清張記念館北九州市小倉北区城内2の3093(582)2761【観覧料】 ※( )内は団体料金一般   500円( 400円)年長者利用証提示:400円中・高生 300円( 240円)小学生  200円( 160円)【開館時間】(入館は午後5時30分まで)午前9時30分~午後6時【休館日】年末( 12月29日~12月31日)Informationhiroba 小 野 芳 美北九州市立松本清張記念館 専門学芸員Yoshimi Ono清張アラカルト 時代が変わっても面白く読めてしまうのが清張作品の凄いところ。ミステリーの醍醐味と併せて作品の時代や雰囲気もどうぞ楽しんでください。催事情報を見る