CulCul 2月号 2014 page 5/16

CulCul 2月号 2014

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概要:
北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

5 CulCul 2014.February村復興を見事成功に導きます。そこでは読書家、勉強家としての二宮というよりも、実業家でもあり優秀なコンサルタントでもあった二宮の思想・哲学や行動力を大いに学ぶべしということでしょう。 さて、小学校に置かれた二宮像は「寸暇を惜しんで勉学に励む姿」を子どもに示す、ということが主な役割でしょう。国内の小学校に二宮像が多く置かれた時期は主に昭和初期で、その背景には自主的に国家に献身・奉公する国民育成政策がありました。そこで二宮像が担う意味は「良き学習者のお手本」であり「道徳実践者のお手本」ということでしょう。戦後になると、そのようなイメージがその通り継承されるケースもあれば、一方で「戦時教育の名残であり、今の児童の教育方針にそぐわない」という指摘や「歩いて本を読むのは危険」という声もあがったりするなど、像の解釈も様々なものになってきています。 このように姿かたちが同じ(あるいは似た)像であっても、それが置かれる場所の性質や人々の価値観、社会背景の違いによって、像の意味や解釈は常に変わってきます。ということは、これもまたすべての美術作品に言えることですが、とり美術hiroba 花 田 伸 一北九州アートめぐりキュレーターShinichi Hanada小学校の二宮金次郎像 市内のいくつかの小学校に二宮金次郎の彫刻が設置されています。本誌読者の中には母校に置かれていた二宮像を懐かしく思い出す方もあるでしょう。 さて、これは美術作品すべてに言えることですが、作品が担う意味や解釈のされ方は、作品を見る人の価値観や時代背景によって常に変わります。特に公共の場所に恒久的に置かれる美術作品(パブリックアート)は、その作品が置かれた場所の性格や社会背景などによって、意味や解釈が大きく変わってきます。 たとえば、東京の八重洲ブックセンターの入口にも(文字通り「金」色の)二宮金次郎像が置かれていますが、この像に担わされたメッセージは言うまでもなく「読書の奨励」でしょう。つまり「良き読書人のお手本」としての二宮像ということです。 また、企業のロビーなどに二宮像がもしあれば、それは「ビジネスマンのお手本」として設置されたものでしょう。二宮はよく知られるように「苦学と孝行」の人というよりも、むしろ、市場社会の考え方を持つ合理主義者でした。問題分析、経費節減、資産運用などの才に長け、人口もGDPも伸びない江戸後期の低成長時代にあって農わけ公共の場所に恒久的に置かれる彫刻作品やモニュメントでは、モノを残し伝えていくことに加えて、そのモノにまつわるモノ語りをいかに伝えていくかが、モノの保存と同様あるいはそれ以上に大事なのだということが分かります。 二宮像に限らず、市内に設置されたパブリックアート作品を改めて見直してみて、その作品にまつわるモノ語りを掘り起こし、次世代へ伝えていくことが必要なのではないかと思います。モノ語りが失われたり、変わっていったりする前に。