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CulCul 4月号 2014

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概要:
北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

画業40周年記念追悼企画「畑中純展~小倉に帰ってきたどぉ~っ!」2図① 畑中純『まんだら屋の良太』図② 畑中純『ガキ』図③ 畑中純/宮沢賢治『どんぐりと山猫』(図②、95?97年)では、紫川の上流で虫取りや川遊びに興ずるさまを伸びやかに描きました。畑中が、人間の不条理が渦巻く街と、美しい自然との間に、九鬼谷温泉という桃源郷を作り出したのは、北九州ならではの発想だったと言えるでしょう。 加えて、二人の文学者からの影響を挙げねばなりません。まず、伊藤整せい。「生命の発露」の追求を小説の核に据える伊藤整の小説論が、畑中漫画の基礎になりました。そして、宮沢賢治。青年期、心の支えとして賢治の作品を読み込み続け、やがてそれをモチーフに版画を手がけていきます(図③、『どんぐりと山猫』97年)。人間の欲望やだらしなさを、あるがままに受け止めてくれる、畑中版イ※1ーハトーブが、九鬼谷温泉ということになるでしょう。 このたび開催する「畑中純展」(4月26日?6月22日)で 人の世界である里と、神の世界である山の中間に、聖と俗が溶け合い、善と悪がないまぜになる桃源郷がある―――畑中が描いた九鬼谷には、そういった山岳信仰や神仙思想の影響を見て取れますが、最も強く影響を与えているのは北九州の風土でしょう。 八幡を中心とした大工業地帯や国際港門司を擁し、明治以来、膨大な人と物と金が北九州の街を往来しました。労働者たちを顧客として大衆娯楽産業も花開き、そこには光もあれば闇もあります。欲望、虚栄、裏切り…人間が社会を形作る限り必ず生まれてくる様々な不条理が、街には渦巻いています。 ただ北九州の場合、東京や大阪など他の大都市とは異なり、街を少し離れるとそこには、山・川・海と豊かな自然が広がっています。畑中が幼少期の体験を織り込んで描いた作品『ガキ』 北九州市漫画ミュージアムは、50名以上にもおよぶ北九州市ゆかりの漫画家の業績を紹介すべく、設立されました。多彩な顔ぶれの中でも、作品に北九州をもっとも濃密に描いたのは、畑中純(1950?2012)をおいて他にありません。 代表作『まんだら屋の良太』(図①、79?89年)は、山あいの架空の温泉郷「九く鬼き 谷たに温泉」が舞台です。街から逃がれて谷を訪れた、すねに傷持つ人々が、豊かな自然と湯煙と人懐っこい谷の住民たちにほだされて、自分をさらけ出していく。ただし多くの場合、背負った問題は解決しないし、本人も別に改心するわけではありません。谷は、訳ありの人々をただあるがままに受け入れ、居場所を与えてくれるのです。12 北九州市漫画ミュージアムInformation専門研究員 表  智 之 Tomoyuki Omoteは、漫画原稿だけでなく、版画やその版木、新人時代のペン画や油絵など、畑中の画業の全体像をご紹介します。また、作画の参考にみずから撮影した風景写真や作画道具など、創作の舞台裏に迫る資料も多数展示する予定です。北九州という街の息吹が、どのように作品へと昇※2華されていくのか、ぜひ感じ取ってください。【開催期間】4月26日(土)~6月22日(日)【会場】北九州市漫画ミュージアム【開館時間】午前11時~午後7時(入館は午後6時30分まで)※毎週火曜日休館(4月29日・5月6日は開館、5月7日は振替休館)【入館料】一般300円 中高生150円 小学生100円<常設展とのセット券>一般600円 中高生300円 小学生150円【お問合せ】北九州市漫画ミュージアム093(512)5077※1 宮沢賢治による造語で、心象世界中にあ   る理想郷を指す言葉。※2 情念などがより純粋な、より高度な状態   に高められること。催事情報を見る