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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

4企画展『「火の路」誕生秘話』図録記念館で販売中(通信販売も可)『火の路』(上下・文春文庫)展示中の『古代史カード』「アケメネスペルシア金貼銀製盆」の精密な模写が目を惹く傑作に挑戦してみては如何でしょう。 『火の路』では、清張は作中論文に精力を傾注しました。実際〈論文が主役〉とも言っています。その情熱がよく現れているのが、古代史家との往復書簡です。特に、福山敏男、藪田嘉一郎の返書は早いうえに懇切丁寧で、有益な教示が多かったので、2人を《『通信講座』の恩師》※2と称えました。例えば、両ふたつきのみや槻宮の「観」に道教の影響を問う清張に、わずか二日後の日付の返書で「道教には何の関係もありません」と即答を寄こした薮田に、清張は《『藪田ゼミナール』に入ったようだ》と若々しい感想を伝えました。これらの書簡は、企画展図録ナンバー11『「火の路」誕生秘話』に写真入(48枚)で紹介しています。 また、館内第一展示室に『火の路』関係の資料を2点、展示しています。『創作ノート』と『古代史カード』です。後者は、読んだ本の〈一部分を書き抜き、要約を付し、書名と該当ページをつけ〉〈感想も付した〉※3 読書カードです。「索※4引」 などを見ると、日本・東洋史合わせて約300件あり、内容は古代ペルシア帝国や※5西せい域いき・胡※6人、ゾロアスター教や密教・護ごま摩など、東西交流に関するものが大半を占めます。その中で「はてな?」と違和感をもったのが、キリスト教の動物《犠牲》などの数枚のカードです。どの作品のための資料かと考えたとき、前記往復書簡中に、酒船石は〈神の犠牲に供する牛を殺す施設ではなかったか〉という清張の質問(連載前)があったことを思い出したのです。『カード』は、清張が60代後半から取り始めたそうですが※7、《犠牲》のカードが酒船石の用途と関係しそうなことからすると、『火の路』以後、内容からみて『眩人』(77年2月?80年9月)あたりを中心に作られたと推察されます。 清張山脈の偉※8容は、現代・歴史・推理小説、現代史・古代史研究のノンフィクションなどの山さんりょう稜がせめぎあって形づくられています。その大山稜の一つ、清張古代史には高い峯みねが三つあります。《邪馬台国》問題が最高峰で、記紀神話や風土記で研究する日本民族・国家形成の問古代史ミステリーの傑作『火の路』―古代飛鳥の地にペルシア人がいた? 『火の路』は、1973年6月16日から翌74年10月13日まで、『火の回路』と題して「朝日新聞」(朝刊)に連載された推理小説です。 大学の史学科助手、高須通子は奈良県飛鳥にのこる、酒さか船ふね石いしや※1猿さる石いしなどの古代石造遺物の調査中、謎の男、海津信六と知り合います。酒船石などの謎の解明をテーマにした論文を発表した通子は、その後、イランで拝火壇などのゾロアスター教遺物や拝火儀式を実見して帰国、第二の論文を発表する。古代飛鳥の地にペルシア人(ゾロアスター教徒)が居住していたという仮説を論証した論文だが、これは松本清張の自説でした。清張はあえて、取っつきにくい古代史論文を作中に組み込みました。しかし、推理小説の面白さも忘れません。主人公は学界の偏狭な権威主義の犠牲となり、若い海津の姪は自殺し、知り合いの男は古墳の盗とう掘くつ中に事故死します。二つの死の真相を明らかにする鍵は、海津の封印された過去と現在の裏の顔にありました。活字を大きくした新装版文庫(文春文庫)が出ています。この機会に古代史ミステリーの文芸北九州市立松本清張記念館北九州市小倉北区城内2の3093(582)2761【観覧料】 ※( )内は団体料金一般   500円( 400円)年長者利用証提示:400円中・高生 300円( 240円)小学生  200円( 160円)【開館時間】午前9時30分~午後6時(入館は午後5時30分まで)Informationhiroba 中 川 里 志北九州市立松本清張記念館 学芸担当主任Satoshi Nakagawa清張アラカルト題と、《ペルシア・ゾロアスター教(徒)の日本伝来》に象徴される東西文明交流の問題がそれと頭を並べています。そして、東西文明交流の問題の原点に位置するのが『火の路』で、その尾根は『眩人』、『清張通史6 古代の終焉(原題『寧楽』)』、『ペルセポリスから飛鳥へ』と連なっているのです。※1 吉備姫皇女王墓内にある謎の石造物※2 『古代史私注』76年2月?80年12月、「本」(講談社)※3 「読書備忘カード」85年1月、「別册文藝春秋」※4 「読書カード」『作家の手帖』(81年3月25日、文藝春秋)に収録※5 古来中国の西方にある国々を呼んだ総称※6 中国で西域の諸民族をさし、唐では特に多くイラン人をさした。※7 記念館『館報』第13号の「展示品紹介」参照※8 仰ぎ見るほどのすぐれてりっぱな姿催事情報を見る