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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

3 CulCul 2014.June 2011年3月11日。東日本大震災は、演劇の世界にも大きな影響を与えた。当時「こんな時に演劇なんかやっていていいのか」「こんな時だからこそ演劇が必要なのではないか」など、創作者たちは様々に悩み、自分たちに何ができるかを模索した。そして、震災を単なる悲劇としてとらえるのではなく、震災によって見えてきた「世界のほころび」にスポットをあてる作品も多く生まれてきた。 4月に枝光本町商店街アイアンシアターで公演を行った劇団「かもめマシーン」の『ニューオーダー』(作・演出: 萩原雄太/4月12日・13日)も、そういった作品の一つだ。東京を中心に活動するこの劇団は、11年以来、「3・11」を背景にした作品を発表し続けている。この『ニューオーダー』も、震災によって揺さぶられる「自分の居場所に対する安心感」にまつわる物語だ。前作『スタイルカウンシル』では、実際に福島に行って取材をし、方言を含めて、その生の言葉を俳優に喋らせるなど、積極的かつストレートに震災に向き合ってきた。以前、若者の作品に「自分の居場所」をテーマにした作品が増えてきている気がする、と書いた事があるが、この劇団の「居場所」の物語がそれらと比べて幾演劇hiroba おおつか えみこ演劇の街は、いま大塚恵美子演劇事務所 代表Emiko OtsukaTremolo Angelos『ホシハチカニオドル』公演写真かもめマシーン『ニューオーダー』チラシ震災と向き合う演劇人分骨太に思えるのは、現地の空気を吸った経験があるからなのだろうか。 北九州でも、震災に向き合った作品が創られている。北九州在住のバイオリン奏者・谷本仰と広島を中心に活動している身体表現者・大槻オサムのユニット「Tremolo Angelos」の『ホシハチカニオドル』もまた、震災が生み出した傷を扱った作品だ。 実はこの作品、1986年のチェルノブイリの原発事故、99年の東海村J CO臨界事故など、放射能によって命を落とした人々の魂に寄り添う作品として、2011年2月に発表されたものだ。その直後に東日本大震災、そして福島第一原発事故が起こった。以来、「100回公演」を目指して、日本各地で上演を続けているそうだ。 コンセプトに「いのち奪われ、もの言うことを許されなかった人々。彼ら彼女らの言葉や祈り、叫びや歌、踊り。それらが星となって夜空の闇に輝いているなら、それらをつないで星座を見出し、まったく新しい物語を聴き取ることができるはずだ」とある通り「闇」「身」「興」「森」「光」などの文字と共にオムニバス形式で展開される物語は、死者を忘れず、対話し続けようとする強い意思という一本の線で結ばれている。かといって、決して声高に状況を嘆いたり、責任の所在を問うたりはしない。まさに星の瞬きのような儚さすら感じられる作品だ。 今年度は宇部、大阪公演が決定しているようだが、地元北九州でも公演がある時は、是非一度観劇をお勧めしたい。 12年3月11日、ニューヨークをはじめとしたアメリカの各都市で『震災SHINSAI: Theatersfor Japan』が開催された。被災地の演劇人、劇場などのために、支援金の募集を目的とした企画だ。日本の演劇人も参加して、ドラマリーディングや作品上演が行われた。そう、「演劇の力」を信じる者の一人としては、やはり、声を大にして言いたいのである。「今だからこそ、演劇が必要なのだ」と。