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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

2 1985年5月から30年間、青年漫画誌週刊『モーニング』(講談社)に連載されている、うえやまとち『クッキングパパ』。いわゆる「グルメ漫画」の草分けの一つですが、手軽な家庭料理に焦点を当て、簡単なレシピを毎回載せるなど独自の作風で知られています。 毎回の創作工程も独特で、まず、どんな料理を取り上げるかを決めるために、実際に調理し、試食します。『クッキングパパ』の料理は、材料はごく普通ですが、食材の組み合わせや調理方法に創意工夫が凝らされ、その分、試行錯誤も多いことでしょう。 いい料理ができると、そこからストーリーの構想に入ります。この料理は誰が作って、誰に食べさせるのか? 『クッキングパパ』は、食卓を囲んで育まれる人と人のつながりを描く作品ですから、登場する料理には、その時々の〝もてなしの心?が込められています。親が子に、子が親に、恋人に、友人に、仕事仲間に。お祝いの気持ちがこもった華やかな料理もあれば、疲れた心にじんわりと染みる素朴な料理もあります。 この料理を作ったら、食べたら、どんな気持ちになるだろう。そんな気持ちで食卓を囲むとすれば誰だろう。そろそろ彼女にプロポーズしそうなあいつだろうか、それとも最近お疲れ気味のあの娘だろうか…。そんなふうにストーリーを作っていくのでしょう。 例えば、物語の中心となる荒岩一家の長男・まことが沖縄の大学に入学したときに、母・虹子が作った料理。まことが入学式に出席している間、虹子は大学の寮のまことの部屋で沖縄の郷土料理「ドゥルワカシー」を作ります(図2)。田芋(里芋の一種)や豚バラ肉のブロックを茹でたり炒めたりして、念入りに練り合わせたもので、とても手間のかかる料理です。 実は虹子は料理があまり得意でなく、荒岩家の台所はもっぱら「パパ」の一味が預かっています。そんな虹子が心を込めて丁寧に、茹で、刻み、混ぜる。一手間、一手間かけるごとに、息子と過ごした18年間が胸をよぎったことでしょう。そんな料理であればこそ、まことも万感の思いを込めて味わうのです(図3)。そして、まことの成長を見守り続けてきた読者も、親の想い、子の想いに共感し、温かい気持ちになるのです。 作者のうえやま氏に今後の展開について尋ねると、「んー、あいつはねー、誰とくっつく気なんだろうねー」と、家族や親戚のうわさ話でもするような答えが返ってきます。登場人物たちが、作者の意図とは別に独立した人格を持っていて、あいつならこんなときに何を思い、何をするか、それを想像すればおのずとストーリーができる。漫画にはよくあることですが、何しろ『クッキングパパ』は30年分の想いが織り込まれた物語。もはや作者にも予測不可能なのかもしれません。 今回の30周年特別展では、そんな濃密さを実感いただくべく、貴重な生原稿の展示を中心に、作中に登場する実在の人や店の紹介、創作の舞台裏など、あれこれ工夫を凝らしています。どうぞご期待ください。26専門研究員 表  智 之 Tomoyuki Omote『クッキングパパと九州・福岡の仲間たち』連載30周年記念特別展連載30周年記念特別展『クッキングパパと九州・福岡の仲間たち』【開催期間】5月30日(土)~7月5日(日)【開館時間】午前11時~午後7時(入館は午後6時30分まで)【休館日】毎週火曜日【入館料】一般500円、中・高生300円、小学生150円【お問合せ】北九州市漫画ミュージアム093(512)5077Information【常設展とのセット券】一般800円、中・高生400円、小学生200円図2 第927話「かあちゃんのドゥルワカシー」より。第96巻172ページ cうえやまとち/講談社図3 同前。第96巻177ページ図1 連載30周年記念ロゴ cうえやまとち/講談社こゆかずみ北九州市漫画ミュージアムcうえやまとち/講談社催事情報を見る