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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

3 CulCul 2015.June演劇hiroba おおつかえみこ演劇の街は、いま大塚恵美子演劇事務所 代表Emiko Otsuka演劇の街は、かつて このコーナーのタイトルである「演劇の街は、いま」は、「北九州演劇祭」の実行委員会の合言葉だった「北九州を演劇の街に」からいただいたものだ。1993年から2007年まで、計15回開催された演劇祭は、北九州の演劇を劇的に変化させた。その当時まかれた〝種?は、今でもこの街でさまざまな花を咲かせ、実を結び続けている。 では、それ以前の北九州の演劇はどうだったのか? 面白くも懐かしい資料を手に入れたので、今回は「今」ではなくて「かつて」について書いてみようと思う。 その資料とは、1987年から92年まで「劇的企画NEO」が発行していた『劇的通信』というフリーペーパーだ。 「劇的企画NEO」は劇団ではなく、演劇公演や劇団そのものをデザインし、企画実行する〝プロデュース集団?だった。現在でもそのようなスタンスの団体は珍しく、それが80年代後半に既に存在していたのは、北九州が「演劇の街」となるポテンシャルを持っていたということでもあるだろう。 この『劇的通信』は、主にNEOがプロデュースしていた「劇団夢の工場」の公演のパンフレットに挟み込みで配布されていたもの。B4二つ折り、4ページ構成の紙面には、細かい文字でびっしりと記事が詰め込まれている。 作品レビュー、お勧めの公演情報、新劇団の結成やら解散やらのニュース、劇場についてのコラム、照明ミニ講座、話題の人へのインタビュー、読者からの観劇レポートなど、情報は多岐にわたり、開場から開演までの時間をしっかりつぶせる分量である。現在でも、公演ごとに独自の情報を掲載したフリーペーパーをパンフレットに挟んでいる劇団はあるが、この『劇的通信』は北九州とその近郊の演劇を幅広く取り上げようとしている姿勢が特徴的だ。   第1号の表紙を飾ったのは1987年8月に行われた『S・D・P・F(サマー・ダンス・パフォーマンス・フェスティバル)』参加の『パラダイス』という作品だ。当時勢いのある活動を展開していた劇団「碧」、結成して間もない「飛ぶ劇場」をはじめとした市内5劇団と北九州大学演劇研究会、九州工業大学演劇部に、フリーの役者を加えて行われたなかなか贅沢な合同公演だ。 実はこの作品には私も役者として参加した。西日本総合展示場という大きな会場に加えて、総勢50名になろうかという大所帯の公演はずいぶん大変だった記憶がある。 面白いことに第2号のトップ記事は、「S・D・P・Fをたたっ斬る」というタイトルの、公演の〝反省?文だ。自身のプロデュース力不足を嘆き、かつ「合同公演という花火を打ち上げるにはまだまだ北九州のアマ劇団は実力をつける必要があると痛感した舞台であった」と締めくくられている。なんとも正直である。 この率直さは、作品レビューにも表れていて、今なら名誉棄損で訴えられるのではないだろうかと心配してしまうような手厳しい批判も書かれている。しかし、他の記事と合わせて読んでみると、編集者たちの「演劇愛」がひしひしと伝わってくる紙面構成だ。 何にしても貴重な資料には違いない。今の北九州で同じようなペーパーを立ち上げるとしたら、どのような紙面になるのだろう。過去を顧みながら未来を妄想したら、とても楽しくなってしまった。ぜいたくあお『劇的通信』第1号表紙『劇的通信』第5号表紙『劇的通信』第8号表紙