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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

7 CulCul 2015.July埋蔵財化文hiroba 中 村 利 至 久遺跡からのメッセージ(公財)北九州市芸術文化振興財団埋蔵文化財調査室 調査係長Toshihisa Nakamura 私は2011年3月11日に発生した東日本大震災の復旧・復興に伴う埋蔵文化財発掘調査を支援するため、昨年の4月から11月までの8カ月間、公益財団法人岩手県文化振興事業団に派遣され、岩手県の職員の方々と発掘調査を行ってきました。ところで、読者の皆さんの中には震災復旧・復興と発掘調査にどのような関係があるのだろうと不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、復旧・復興への取り組みに埋蔵文化財の発掘調査がどのように関係しているのかを簡単に紹介したいと思います。 ご存じのように、東日本大震災は広範な地域に甚大な被害をもたらしました。中でも岩手、宮城、福島の3県では、その後に発生した津波によって沿岸部に壊滅的な被害を受けています。これらの地域では現在も懸命に復旧・復興へ向けた取り組みが行われています。その中には災害復興道路の建設や高台移転のための宅地造成など、開発を伴うものが多くあります。これらの開発予定地に遺跡が見つかることが多く、発掘調査を必要とする件数が激増しました。 文化財保護法は、開発によって破壊される遺跡に対して発掘調査を行うよう求めています。岩手、宮城、福島の3県にも、こうした求めに応じて発掘調査を行う公的な組織が存在します。しかし、このような急激な変化に対応できるだけの体制をすぐに整えられないことから、文化庁主導の下、全国の自治体や財団法人の関連部門に対して発掘調査員の派遣が要請されているのです。 14年4月の時点では、この要請に応じる形で私を含めた計62人の職員が3県に派遣されています。それぞれの所属は、北は北海道から南は沖縄県にまで及んでおり、その支援の輪はまさに列島規模といってよいでしょう。一見無関係のように見える復旧・復興への取り組みと発掘調査との間には、このような深いつながりがあるのです。 さて、このような経緯で岩手県に派遣された私は、陸前高田市において中世の山城の発掘調査を担当しました。陸前高田市は津波によってかつての市街地が完全に失われており、高台移転の候補地の一つとして、この山城のある丘陵が選ばれたのです。 調査には被災した地元の方々が発掘作業員として参加されました。皆さん大変な経験をされたはずなのに、作業中でもとても明るく、一生懸命な方ばかりでした。その姿に「果たして被災地支援という大役が務まるだろうか」と不安でいっぱいだった私が何度勇気づけられたことか。今でも頭が下がると同時に、このように復興へ向けて力強く【このコーナーの次回掲載予定は9月号です】岩手県発掘記震災復興と発掘調査やまじろ津波によって大きな被害を受けた陸前高田市の市街地〈埋蔵文化財の展示案内〉・ 黒崎歴史ふれあい館(八幡西区黒崎3の15の3黒崎駅横コムシティ1F)常設展開催中常設展『城下町から宿場町へ~出土品が語る黒崎の歴史と文化~』『シュガーロード・発掘物語』【開館時間】午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)※年中無休【入館料】無料・ 北九州市立埋蔵文化財センター(小倉北区金田1の1の3 093(582)0941) 北九州市を掘る(80) 埋蔵文化財速報展『弥生時代と鎌倉時代の高野ムラ-高野山田遺跡-』【開催期間】8月23日(日)まで【開館時間】午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)※毎週月曜日(休日の場合はその翌日)休館【入館料】無料弥生土器や石器、中世の陶磁器や中国銭、土錘(網のおもり)など100点を展示。常設展もあり。どすい立ち上がろうとする方々のお手伝いができたことを誇らしく思っています。 8カ月間に及ぶ岩手県での生活は、私にとっての震災を「遠い場所で起こった悲劇」ではなく、もっと身近で切実な何かに変えました。今年の3月で震災から4年目を迎えましたが、被災地の復興はまだまだ始まったばかりといった状況です。一日も早い復興を遠く北九州の空の下から祈っています。