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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

6 漫画は、他の表現ジャンルから独立して発展するよりは、むしろさまざま々な表現ジャンルを積極的に吸収し、ジャンルの境界を越えて浸潤しあいながら発展してきました。 かつては、報道と漫画が隣接し、浸潤しあっていました。幕末から明治・大正にかけて、ニュースを描くいわゆる「風刺漫画」が報道写真の役割を新聞や雑誌で果たしていたからです。大正期には「漫画漫文」、つまり絵と文による滑稽小説を志向するようになり、漫画と小説も隣接していきます。 そのため、戦後のある時期まで、漫画家は報道関係や文士たちとの交わりが多く、自らも「文士」として振る舞う傾向がありました。戦後にデビューし漫画界をリードした手塚治虫も、戦前以来の漫画家たちと文士的な交わりを積極的に行っています。 時代は下って、高度経済成長とともに、漫画は巨大なメディア産業へと発展しました。新聞や小説に代わって映画やテレビが漫画の隣接領域となり、アニメ(ーション)も急速に発展していきます。 そして1977年、少年漫画誌最大手の『週刊少年ジャンプ』で熊本県出身の一人の若者がデビューし、隣接領域との浸潤を表現の面からも押し進めていきました。江口寿史です。江口はギャグ漫画の手法としてパロディを積極的に展開し、漫画や特撮、アニメ、CM、タレントなどさまざまなジャンルのキャラクターやフレーズを作品にどんどん取り込んでいきました(図1)。しかも、本筋の合間の添え物ではなく、本筋の中にパロディが一体化し、パロディが本筋の流れを止めることなく、むしろ加速させるという、作劇面でも完成度の高いものだったのです。 さらに、流行を後追いするのでなく、流行の最先端を嗅ぎ分けて吸収する、感覚の鋭さも特徴です。『すすめ!!パイレーツ』(77年?80年)の連載当時、電子楽器によるポップミュージック「テクノポップ」が世界的な流行となりつつあり、日本ではYMOが台頭するのですが、「パイレーツ」では海外のテクノポップのレコードジャケットがいち早くパロディ化されていました(図2)。 最新流行のパロディと、すっきりと研ぎ澄まされた描画力とで、江口寿史の漫画はそれまで漫画界のポップスター   江口寿史展 KING OF POP漫画hiroba 図1 『すすめ!!パイレーツ』より、王貞治出演CMのパロディcEguchi Hisashiにない〝オシャレさ?を感じさせました。やがて、企業広告やCDジャケットなどイラストレーションやデザインの仕事も増えていき、江口の絵は漫画の領域を超えて広く浸透していきます(図3)。そして江口寿史本人も、ラジオDJや漫画雑誌の編集長などマルチに活躍し、ポップスターと化していきます。 現在開催中の「江口寿史展KING OF POP」では、よりすぐりのギャグ漫画原稿約100点と、イラスト原画約200点とで、江口寿史の38年間の軌跡をたどっています。現在もなお研鑽を怠らない、描画技術の熟練の過程や、彩色道具・方法の変遷、そして何より、江口の作品と江口自身が世間に広く浸透し、ポップな存在になっていったさまが、ご体感いただけることでしょう。表  智 之北九州市漫画ミュージアム 専門研究員漫画と北九州Tomoyuki Omote【開催期間】9月19日(土)~11月3日(火・祝)【開館時館】午前11時~午後7時(入館は午後6時30分まで)【休館日】毎週火曜/ただし9月22日・11月3日は開館、9月24日は振替休館【入館料】一般500円、中・高生300円、小学生150円【常設展とのセット券】一般800円、中・高生400円、小学生200円【お問合せ】北九州市漫画ミュージアム 093(512)5077江口寿史展 KING OF POPInformationけんさん図2 『すすめ!!パイレーツ』ジャンプ・コミックス版第3巻表紙(1979年、集英社)。中央部分がアメリカのテクノポップバンド「ディーヴォ」のパロディ図3 吉田拓郎のアルバム『一瞬の夏』に寄せたジャケットイラスト(2005年)催事情報を見る