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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

7 CulCul 2015. October雨にうたれて林はみどりのしずくにすきとおる雨がやむとまっていたようにお日さまが金のストローでみどりのしずくをすいあげた    (「金のストロー」) この詩は今年生誕80年を迎えた、八幡市(現・八幡東区)出身の児童文学者みずかみかずよの作品です。雨上がりの林に日が差し込む瞬間が「金のストローでみどりのしずくをすいあげた」と、みずみずしい感性で表現されています。かずよは、八幡中央高校を卒業後、兄の経営する私立尾倉幼稚園に勤めながら、詩や童話を書き始めました。23歳のとき、北九州の児童文学同人誌『小さい旗』に参加、運営の中心を担いつつ意欲的に創作活動を行いました。 文学館では、かずよの詩と童話を収録した文庫本(「文学館文庫」9)を10月に刊行します。少年詩集『こえがする』(1983年3月/理論社)、童話『ごめんねキューピー』(83年11月/佑学社)のほか、補遺として教科書に採用された詩を収録しています。 『こえがする』は、『馬でかければ』(77年5月/葦書房)、『みのむしの行進』( 79年5月/葦書房)に続く三冊目の詩集です。教科書に採用された「ふきのとう」、「金のストロー」、「馬でかければ」を含む67作品が収録されています。この詩集は理論社の「詩の散歩道」シリーズ(全12巻)の一冊として刊行、同シリーズには他に、まど・みちお、谷川俊太郎など名だたる詩人が並び、かずよが全国的にも評価されたことが分かります。 かずよは、「日常の生活でふと出会う小さなものたちにいのちのかがやきを見出し心をゆさぶられる」(詩集『みのむしの行進』あとがき)という言葉を遺しているように、「いのち」をうたった詩人といえるでしょう。この世界の全てのもの―大自然の情景から身近な動植物、周囲の人々など―に対し常に敬愛のまなざしを持ち続け、そこに「いのち」を重ね合わせ、詩で表現し続けたのです。 かずよは、童話の創作も行いました。童話『ごめんねキューピー』は、両親を亡くし親戚の家で生活することになったよしこさんが主人公です。面倒を見てくれるおじさんとおばさんはとても親切ですが、よしこさんは心の奥底では孤独を感じています。近所の駄菓子屋「あずまや」で売られているセルロイドのキューピーが欲しくてたまりみずかみかずよの詩と童話を収録―〈文学館文庫9〉北九州市立文学館 学芸員 小 野  恵 Megumi Onoませんでしたが、遠慮して言い出せません。そしてある日、衝動的にキューピーをお金を払わずに持ち出してしまったのです。4歳で父親、7歳で母親を亡くしたかずよも、大阪の親類に預けられた時期がありました。当時の自身の経験が盛り込まれているのでしょうか、よしこさんの心情に加え、彼女を見守る周りの大人の優しさがこまやかに描かれています。  1988年10月、かずよは53歳で亡くなりました。「言葉をより大切に思い、言葉のもつ生命を信じ」創作を続けたかずよの詩や童話だからこそ、現在も私たちの心に響き、暖かく沁み渡るのでしょう。 文学館文庫は、文学館および書店クエストで販売しております。北九州市立文学館文庫9『みずかみかずよ作品集』収録作品:詩集『こえがする』、童話『ごめんねキューピー』、補遺【販売価格】1000円【販売場所】文学館、クエスト小倉本店【お問合せ】北九州市立文学館093(571)1505みずかみかずよ童話『ごめんねキューピー』(絵・長野ヒデ子 1983年11月 佑学社)詩集『こえがする』(1983年3月 理論社)Informationし