ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

3 CulCul 2015.November演劇hiroba おおつか えみこ演劇の街は、いま大塚恵美子演劇事務所 代表Emiko Otsuka「銀行」だった空間 今年9月、二つの「銀行」で三つの演劇公演を観た。もちろん現役の銀行ではない。銀行として使われていた建物が劇場になったものだ。そして、レトロな銀行の建物にはなぜか不思議な空間的魅力があることをあらためて認識させられた。 一つ目の〝元?銀行は、何度も紹介したことがある「枝光本町商店街アイアンシアター」だ。上演されたのは、宮崎を拠点として活動する「劇団こふく劇場」の第14回公演『ただいま』(作・演出:永山智行/9月12日・13日)。 「こふく劇場」は、1990年、宮崎県都城市で結成された。日本全国で活躍すると同時に、地元宮崎県内でのワークショップや一般参加型の作品創作など、演劇普及活動にも積極的に取り組んでいる劇団だ。現在、三股町立文化会館と門川町総合文化会館のフランチャイズカンパニーとして、劇場と共同で、地域に寄り添った活動を行っている。代表の永山智行は、宮崎県立芸術劇場の演劇ディレクターも務めており、まさに、地元にしっかりと根を下ろした活動を続けている演劇人の代表格だ。 上演会場である「枝光本町商店街アイアンシアター」は、地域密着型の劇場として知られている場所。北九州公演の会場として「こふく劇場」がここを選んだというのも興味深い。13日の終演後には、アフタートークとして、北九州市を拠点として全国展開している「飛ぶ劇場」代表の泊篤志との対談「九州で劇団を続けるって…」も開催され、〝地方?というものを考える良い機会となった。 さて、もう一つの銀行は「北九州市立旧百三十銀行ギャラリー」だ。そこで上演されたのは「九州女子大学・短期大学演劇部」「九州国際大学演劇部」「演劇プロジェクト・ダブルクラブ」の合同公演『B・HAPPY』(作:若頭ぐっち〔橋口征司〕/9月19日・20日)。 この「旧百三十銀行ギャラリー」は、昭和61年に北九州市の有形文化財に指定された美しいデザインの建物だ。平成5年からギャラリーとして、写真展、美術展のみならず、演劇公演の会場としても利用されている。今は比較的大学演劇関係の利用が多いようで、「劇団FLYBY」や「劇団なべぞこ」のような、大学の演劇部から派生した劇団の公演が行われている。 建物の構造上、完全暗転が作りにくい会場ではあるが、それを逆手に取って、外光をうまく取り入れると、白い内装と相まって、大変魅力的な空間になる。演出家の闘志をかき立てる場所だ。「ダブルクラブ」は、公演に先立って、9月13日と18日に「演劇を写真で観る『ダブルクラブ写真展』」と銘打って、これまでの公演写真や、衣装、小道具を展示するなど、この空間の魅力を引き出すための工夫を凝らしていた。 翌週の「枝光本町商店街アイアンシアター」では、「飛ぶ劇場」のユニット「block」が『バケツ』(作・演出:寺田剛史/9月25日・26日)を上演。小さな劇場いっぱいに寺田ワールドが広がるような作品を見せてくれた。 冒頭に書いたように、昔の銀行の建物は、不思議な魅力を持っていると思う。そのひんやりとした、静謐な空気は、開演前のわくわく感をより刺激してくれる。 一説によると、昔の銀行の建物が豪華で美しいのは、そこにお金を預ける顧客の信用を勝ち取り、取引を円滑に進めるためだったそうだ。おそらくさまざまなドラマが起こったに違いない場所。劇場に形を変えても、かつての泣き笑いの記憶をまだ宿しているのだろうか。なんにしても劇的な空間である。みせいひつ『ダブルクラブ写真展』チラシblock『バケツ』チラシ劇団こふく劇場『ただいま』チラシ