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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

3 CulCul 2016.March演劇hiroba おおつか えみこ演劇の街は、いま大塚恵美子演劇事務所 代表Emiko Otsuka温故知新で温まる 寒い季節になると、外に出るのがなにやら億劫になる。劇場に出かけるのもいいが、こういう時期にはゆっくりと戯曲を楽しむのも一興である。ということで、久しぶりに岸田國士の作品を読んでみることにした。 ご存じの方も多いと思うが、岸田國士とは1920年?50年ごろに活躍した劇作家であり、小説や評論など幅広い文筆活動を行った作家である。岸田衿子、今日子姉妹の父としても有名であり、白水社が行っている彼の名前を冠した「岸田國士戯曲賞」は時に演劇界の芥川賞とも言われ、劇作家の間では一定のステータスとして認知されている。 その著作の多くは、現在ではインターネットの「青空文庫」やKindle版の電子書籍で無料公開されており、気軽に読めるのがありがたい。 彼の短編戯曲『紙風船』は2000年に「うずめ劇場」のペーター・ゲスナーが演出して第1回利賀演出家コンクールの最優秀演出家賞を受賞したことを覚えておられる読者もいらっしゃるのではないだろうか。同作品は12年に「のこされ劇場」が上演するなど、北九州の演劇ファンにもなじみが深い。この『紙風船』や『ぶらんこ』などの短編の、かみあっているようでかみあわない不思議な会話のやり取りには、今から90年近く前に書かれたとは思えない新鮮さを感じる。また、演劇の在り方についての評論も不思議に色あせない論調で、かなり楽しめる。興味はあるが、古い本はちょっと…と思われる方には、ケラリーノ・サンドロビッチが彼の短編集を一つの街の物語にコラージュした『犬は鎖につなぐべからず』をお勧めする。 さて、温故知新つながりで舞台の話題を一つ。長い時を経ても残っている作品にはやはりそれなりの理由があるのだと感じさせる公演が、宮崎県で行われている。宮崎県立芸術劇場制作の「演劇・時空の旅」シリーズである。古代ギリシャ時代から現代にいたるまで、世界各地で残されてきた戯曲をガイドブックに「時間と空間を旅しながら、人類史をたどっていくシリーズ」という、非常に興味深い企画である、宮崎県立劇場のディレクターである永山智行が演出を手掛け、今までに7作品が上演されている。 北九州の演劇についての文章になぜいきなり宮崎? と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、実はこの公演には、毎回北九州の役者、特に「飛ぶ劇場」の俳優たちが関わっている。 第1作目の『女の平和』(作:アリストパネス)には、内山ナオミ。第2作目の『シラノ・ド・ベルジュラック』(作:エドモン・ロスタン)には有門正太郎。第3作目の『三人姉妹』(作:アントン・チェーホフ)には寺田剛史と葉山太司。第4回目の『フォルスタッフ/ウィンザーの陽気な女房たち』(作:ウィリアム・シェイクスピア)には大畑佳子。第5作目『日本人のへそ』(作:井上ひさし)には、「飛ぶ劇場」から木村健二、「のこされ劇場≡」から沖田みやこ。第6作目『シラノ』の再演を経て、第7作目『ゴドーを待ちながら』(作:サミュエル・ベケット)には寺田剛史。 地元ファンも多い実力のある役者たちの出演とあって、北九州からの客も多いそうだ。ちょっとした旅行気分で、違う街の劇場で時空を超えた名作を観る、というのもなんとも劇的な体験だろう。 こうやって書いているうちに、これらの作品をもう一度読みたくなってきた。さて、本棚をひっくり返すとしようか。岸田國士『紙風船』『ゴドーを待ちながら』チラシケラリーノ・サンドロビッチ『犬は鎖につなぐべからず』おっくうみきし だ くに お