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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

3 CulCul 2016.June演劇hiroba おおつか えみこ演劇の街は、いま大塚恵美子演劇事務所 代表Emiko Otsuka海外からの秀作、今年も ここのところ児童青少年演劇に絡んだ話題が多くて恐縮だが、今月も、「子どものための演劇」について書かせていただきたい。そこには常に「演劇の持つ力」について考えるためのヒントが見え隠れしているように思えるからだ。 先日、いわゆる〝子ども向け?をうたっている演劇作品を観る機会があった。当然親子連れの観客ばかりで、私のすぐ前にも幼稚園の年長さんほどの年齢の男の子が座っていた。上演された作品が、登場人物が自分の気持ちを全部台詞にしてしゃべるという、いささか残念な構造だったためか、10分もたたないうちに、男の子がもぞもぞと動き始めた。そのうち席を立とうとしては母親からたしなめられ、を繰り返し、なんとも落ち着かない状況が終演まで続いた。ところが、その後、私が別件の打ち合わせで舞台裏にお邪魔し、〝ばらし?(舞台の装置や照明機材などを撤去することをいう舞台用語)が始まった舞台から客席をふと見ると、くだんの男の子が舞台を凝視している。先ほどのお行儀の悪さはどこへやら、大きな舞台装置が取り払われ、照明機材がぶら下がったバトンが下ろされ、黒い服を着た体格のいい舞台スタッフが次々と太いコードや何か秘密めいた道具を運んでいくさまを、目をキラキラさせながら微動だにせず見つめているのだ。彼にとっては、さっきまでの風景が魔法のように姿を変えていくこの〝ばらし?の光景の方が、先ほどの説明尽くしのお芝居よりもよっぽど「劇的」であったようだ。 何をどこまで説明し、どこからを観客の想像力にゆだねるか。これは演劇を創る側が永遠に試行錯誤しなくてはならない匙加減であると思う。その塩梅が秀逸な作品を観ることができるのが、北九州芸術劇場が毎年開催している『大人も一緒に 子どもたちの劇場シリーズ』だ。今年も、『2016-海外編-』が7月16日、17日の両日、小劇場と創造工房にて開催され、2団体が公演を行う。 一つは創造工房で行われるスペインの「エル・パティオ・テアトロ」による『ア・マノ』(原題は"A Mano/By Hand")。劇団名の「パティオ」は「人が集い、聞き、探し、遊ぶ場所」という意味だそうだ。スペイン国内のみならず、多くの海外の演劇フェスティバルに参加してきたこの作品は〝粘土?の人形を使った人形劇。陶芸工房で生まれ、ショーウィンドウに移された粘土のキャラクターのかわいらしい冒険譚だ。原題が「AMano」=「手」であることからも分かるように、手が生み出す魔法の世界を堪能できる。 もう一つは小劇場で行われる「ダリア・アチン・テランダー」による『黄色いくつしたの夢』(原題は"The Dream of aYellow Sock")だ。セルビアで特に乳幼児向け作品を中心に創作していた団体だが、現在はスウェーデンのストックホルムを拠点に活動し、海外ツアーも意欲的に行っている。 『黄色いくつしたの夢』は対象年齢2歳からその家族までという、幅広い年齢に向けたダンス作品。いつも人間に履かれて自由が無い靴下たちが夢の中で思いっきり楽しむ様子をダンサーが時にコミカルに、時にアクロバティックに表現する。 どちらも、観客としてももちろんだが、演劇を創る側の人にもさまざまな発見をさせてくれるのではないかと期待させてくれる作品だ。ダリア・アチン・テランダー『黄色いくつしたの夢』エル・パティオ・テアトロ『ア・マノ』あんばいたんさじ かげんみエル・パティオ・テアトロ『ア・マノ』