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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

5 CulCul 2016. December 11月号に続き、現在開催中の「見立ての手法」展を紹介します。彫刻家・岡崎和郎は今年86歳を迎え、なお現役で制作を続けています。この展覧会は、半世紀以上にわたる活動の中から「見立て」にテーマを絞り、岡崎和郎の作品と、岡崎に「見立て」られた26名の人物による作品や資料で構成しています。今号では、出品作品の中から「調和」「平和」をテーマとした数例を解説します。宇宙の無限をかたちにする 抽象画の巨匠モンドリアンは、水平と垂直の直線のみによって分割した画面に、赤・青・黄の3原色の色面を重ねることで純粋な絵画を目指し、普遍的、絶対的、究極的な「宇宙の調和」の表現に挑みました(図1)。 岡崎はこの絵画を球体に作図し直すことで、面と線がそれぞれつながるように構成しました(図2)。それにより、この球体は配置の向きによって多様な表情が生まれます。つまり絵画は「画枠(フレーム)」から解放されたことで、全てが正面となり、「宇宙の果て」までもが岡崎流に解消されたのです。戦争の記憶、光と影 広島への原子爆弾投下。岡崎はその瞬間を隣県岡山で迎えました。その20年後、井伏鱒二の小説『黒い雨』発表と同じ1965年から原爆をテーマにした制作を始め、戦後50年にあたる95年より、壁にしたたる黒い雨(図3)をモチーフとし始めます。また「電球」は、岡崎にとって脳裏に強く焼き付いた「光の記憶」です。少年時代、空襲回避のため窓から光が漏れないように保護された家の中には、吊るされた1本の裸電球。のちにこの原体験は、原爆投下を題材にしたオブジェに反映されました(図4)。白と黒の関係は反転され、強烈な熱線で歪んだ球体に涙のような白い雨がしたたっています。天災を直視せよ そして2011年3月に発生した東日本大震災。岡崎は「冨嶽三十六景」の一つ《神奈川沖浪裏》に着目し、北斎が描いた大波と太平洋岸を襲った津波のイメージを重ねました(図5)。そして、多くの被災者が語った「黒い波が押し寄せてきた」という証言に基づいて、画中の大波を「襲いかかる怪獣」に見立て、舟や空を黒く塗りつぶしました。見えない「影」は底知れぬ脅威であるがゆえに、負の想像力をも喚起します。この試みをきっかけに、部分を消し去る絵画「消し絵」シリーズが生まれました。さいごに 会場では岡崎作品とともに、ブランクーシ、コーネル、ヨーゼフ・ボイス、河原温、ジャスパー・ジョーンズら現代アートの巨匠たちの作品(本物!)を並置していますので、現代アート入門としてもオススメの企画です。ほか、古くは宮本武蔵の掛け軸や葛飾北斎の浮世絵も展示します(これも本物!)。 岡崎による思いがけない「見立て」をヒントに自身の世界観を広げ、古今東西のアートや文化に幅広く触れる機会となることを願って企画しました。もうひとつの現代アート入門 「見立て」の視点と魅力図2 岡崎和郎《P.M.ボール》2005年 個人蔵図4 岡崎和郎《刻まれた雨 ライトフルーツ》2001年 個人蔵図3 黒い雨のあとが残った白壁1945年 広島平和記念資料館蔵(寄贈者:八島秋次郎)※写真展示図1 ピート・モンドリアン《10枚のシルクスクリーンのポートフォリオ》より1967年 北九州市立美術館蔵図5 岡崎和郎《〈消し絵〉冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》2013年 個人蔵美術hiroba 那 須 孝 幸美術館へ行こう!北九州市立美術館 学芸係長Takayuki NasuInformation見立ての手法―岡崎和郎 Who’s Who【会場】北九州市立美術館 分館(リバーウォーク北九州5F)【会期】11月19日(土)~2017年1月15日(日)※会期中無休ただし12月29日(木)~1月1日(日・祝)は休館【開館時間】午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)【観覧料】一般1000(800)円 高大生600(400)円 小中生400(300)円※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金障害者手帳提示の方は無料年長者施設利用証提示の方は2割減免【お問合せ】093(562)3215つ