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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

2 松本清張記念館では1月から、「清張が描いた日本の近代――豊穣なる小説群」と題して企画展を開催します。 現代を舞台にした社会派推理小説のイメージが強い清張ですが、デビュー作「西郷札」をはじめとして、日本の近代―明治期・大正期を舞台にした作品も、約40年にわたる作家生活の中で、数多く執筆しました。 長編・短編を問わず、実際の事件に題材を得たもの、政情を論じたもの、人物の生涯にスポットを当てた評伝的な作品など、スタイルはさまざまです。生涯を通じて広範な領域に関心を持ち、多様な執筆活動をした清張ですが、特にこれら歴史に関する作品群は「わたしたちがこれからどう生きるべきか」を考えるきっかけを与えてくれます。清張の作品は近現代史系のものでは『日本の黒い霧』『昭和史発掘』などのノンフィクションが有名ですが、今回はフィクショナルな作品にスポットを当てます。 歴史上の空白について「できるだけ手がかりを求めて自分なりの復元をしてみたいのである。空白のままで捨てておくのはいかにも惜しい」と述べる清張は、その空白を「勝手な空想を愉しもうというのではなく」、「歴史家のするような資料の収集と、不足部分の類推による補填を志したいのである」と語ります。つまり、歴史家のように正確に「事実」を追ったうえで、小説家として表現したい。歴史への深いアプローチと鋭い考察、そして自在な文章表現。いずれの方向でも十二分に個性を発揮できた清張ならではの特徴が、こうした近現代を舞台にした作品群には特に表れているといえます。 清張は明治期の政治家を何度か取り上げています。繰り返し題材にした一人に山県有朋があります。 時は1877(明治10)年、西南戦争終結後、各地で頻発する軍の反乱を目の当たりにした山県有朋は、軍の近代化の必要性を痛感します。力を持ち始めていた自由民権運動が軍内部にまで浸透することを阻止すると同時に、兵士たちに国家への絶対的な忠誠を持たせるにはどうしたらよいか…、有朋は一つの〈象徴〉を軸に据えて、近代国家としての日本のグランドデザインを描くことにします。清張は『象徴の設計』でこうした有朋の思考を丁寧に追いました。 明治の元勲では、伊藤博文も『史観・宰相論』「統監」などで取り上げました。「夏島」は、87(明治20)年、憲法草案が紛失した事件をめぐる顛末を描いた作品です。盗まれた草案が事前に漏れて秘密出版され、政府が慌てて保安条例を出すに至ったとされるこの事件。しかし語り手は、民権運動家の手に原稿案が渡った裏には、明治憲法制定を前にした博文の深謀遠慮があったのではないかと推理します。 清張が没してからもうすぐ25回目の夏を迎えますが、清張が作品に込めた思いはいまも色あせません。この企画展を通じて、改めて清張の近現代史作品の魅力をお伝えします。北九州市立松本清張記念館45平成28年度後期特別企画展「清張が描いた日本の近代――豊穣なる小説群」学芸員 小 野 芳 美 Yoshimi Ono平成28年度後期特別企画展ポスターし かん   さいしょうろんげんくんてんまつしんぼうえんりょ平成28年度後期特別企画展 清張が描いた日本の近代――豊穣なる小説群Information【開催期間】1月21日(土)~3月31日(金)【開館時間】午前9時30分~午後6時(入館は午後5時30分まで)【会場】北九州市立松本清張記念館地階企画展示室【入場料】常設展示観覧料に含む常設展示観覧料 一般500円 中高生300円 小学生200円【お問合せ】北九州市立松本清張記念館 北九州市小倉北区城内2の3 093(582)2761催事情報を見る