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概要

北九州市芸術文化情報誌「CulCul」・ 「かるかる」  発行/北九州市、(公財)北九州市芸術文化振興財団 出版事業課

3 CulCul 2017. March「自由」の持つ意味インプロ集団「MOSAiQUES」お寺での公演の様子インプロ集団「MOSAiQUES」大學堂での公演の様子演劇hiroba おおつか えみこ演劇の街は、いま大塚恵美子演劇事務所 代表Emiko Otsuka 1月、インプロ集団MOSAiQUESが、旦過市場内にある大學堂で公演を行った。団体名にある通り、MOSAiQUESは「インプロ」=「即興のパフォーマンス」をやる集団である。飯塚市に拠点を置き、月に1回公演を行ってきたが、2016年の春からは「ツキイチキャラバン」と題したツアー公演を精力的に展開、全国で公演実績を積み上げている。決まった脚本を用いず、観客からもらったキーワードや条件を元に、即興でシーンを創っていくので、とにかく場所を選ばない、むしろ、その場所でしかできない、文字通り、「一期一会」のパフォーマンスにはファンも多い。 「インプロ」という手法については、本誌でも何度か取り上げさせていただいてきた。日本語でしばしば「即興」と表現されるので、「ああ、アドリブでお芝居をやるのね」と解釈される方も多いだろう。アドリブとは、ラテン語の「自由」を意味する「ad libitum」に由来するもの。本来は音楽用語だが、「演劇で、台本にないセリフや動きをさしはさむ行為」と説明している辞書もあるので、「インプロ」がアドリブで成立している、と解釈しても、あながち間違いとは言い切れない。しかし、実は、「インプロ」を成立させるためには、アドリブからイメージされる「自由」からかけ離れた、難しいコツというか、ルールのようなものが存在するのである。 「相手の言うことや行動を頭から否定せずいったん受け入れる」「自分のアイデアにしがみつき、相手をコントロールしようとしない」「質問を多発して相手に決定権を押し付けない」「態度を曖昧にして安全圏に逃げ込まない」「相手に影響を与え、相手から影響を与えられるプロセスを楽しむ」などなど。こうしてみると、日常のコミュニケーションを豊かにするコツとも共通しているようで奥が深い。社員研修などに取り入れる会社が増えているのもうなずける。 「インプロ」とよく似ていると捉えられるものに「エチュード」がある。演劇を少しでもやったことがある方なら、基礎訓練で経験したことがあるのではないだろうか。私も高校、大学のころによくやっていた。ただ、今考えると、その手法はかなり乱暴だったように思う。 例えば「バス停のエチュード」。指導者の先輩からいきなり「ここはバス停です。さあ、シーンをやってみましょう」と言われる。仕方がないから、自分が誰で、なぜバスに乗るのかを考え、それだけではシーンにならないので無理矢理事件を起こしたりする。一定時間がたつと、「はい、そこまで」と打ち切られ、演技がうまかった下手だったと「ダメ出し」を受けて、終わり。 今考えるとかなりな無茶振りである。第一、それをやったところで、身に付くのはせいぜい人前で自分の決めたことをぶれずにやり通す根性くらいのものだろう(いや、それも役者には必要ではあるのだが)。 こんな荒療治的な「エチュード」しか経験していない役者の中には「即興的に何かをする」ことに苦手意識を持つ人も多い。「自由」がトラウマになるとは、なんとも残念なことである。 もちろん、「インプロ」も、やる人の意識次第で、間違ったエチュード状態になることもある。シーンがどうしてもコメディ寄りになってしまうという物足りなさもまだまだ含んでいる。しかし、少なくとも「自由」であることの難しさと責任について考えさせてくれる魅力的なジャンルだとも感じさせてくれる。 こればっかりはやってみないと分からない。もしも「インプロ」と銘打ったワークショップなどを見つけたら一度体験していただきたい。モザイクスだいがくどうアド ・ リビトウム